カウンセラーのコーナー:「ドメスティック・バイオレンス(DV)の原因やそれに正しく対処するにはどうすべきか」

三船純子(JSSカウンセラー)Junko Mifune

JSSに来る相談内容は多岐にわたっております。その中でも生命や人生を左右するほどの深刻な問題に家庭内暴力(DVと呼ばれている)があります。JSSでもこの問題には2名のカウンセラーが長年に渡り携わってきましたが、その解決には多大な時間と労力が必要です。今回カウンセラーの一人、三船純子氏に家庭内暴力について、4回のシリーズとして色々な角度から、プロフェッショナルな意見を書いてもらいました。

その1回目として「DVの原因やそれに正しく対処するにはどうすべきか」等をとりあげてもらいました。2回目は「DVの子供への影響」、3回目は「別居」、4回目は「離婚」というテーマで書いてもらいます。
(編集部より)

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JSSに入ってくる相談内容は多岐にわたりますが、ドメスティック・バイオレンス(DV)に関するご相談は少なくありません。親しい関係(生活の本拠を共にする交際相手)の中で、パートナーにより奮われる暴力がDVですが、このDVに該当するのは、配偶者のみならず、事実婚や同性婚も含まれ、男女の性別を問いません。また離婚後の元配偶者や、別れた元交際相手からの暴力もDVに該当します。今回の記事では、「なぜDVが起こるのか」、「どのような暴力がDVに該当するのか」、そして「そのような状況の方が周りにいる場合にはどうしたらよいのか」などについて書かせていただきます。

2014年度にJSSに持ち込まれたDVに関わる相談数は55ケースありました。全体の件数はここ数年ある程度一定しており、急激な増加および減少は見られませんが、その中で長期に渡り継続的なサポートを必要とするケースの数は増加している傾向にあります。最も多いのは、カナダの永住権をもつ邦人女性がDVの被害者になっているケースですが、カナダの永住権を有さない日本人女性でDVの被害者になるケース、邦人女性がDVの加害者として警察に逮捕されているケース、DV加害者である夫が邦人であるケースなど、その形態は多様化してきているようです。また、ワーキングホリデー制度を利用してトロントに来ていた女性が、カナダの永住権はないままに妊娠・出産し、カナダ人のパートナー(または夫)からの虐待を受け、最終的にファミリーシェルターに避難して生活しているケースが増加しているようです。永住権が無ければ健康保険もなく、政府やその他の非営利団体からのサポートを受けるのにもいろいろ制限が生じることになります。さらに、子供がいれば2014年4月に施行されたハーグ条約との絡みもあり、日本にその子供を連れて帰国することが困難になることもあり、この状況にいる日本人女性は極めて困難な生活を強いられる結果となります。

カナダの2009年の国勢調査によると、毎年DVによる検挙数は4万件以上に上りますが、DVの中から実際に警察に通報されるのは22%のみとされていますので、実際のDV件数はもっと多いことが予想されます。また日本警察庁の2014年度報告によると、DVの被害報告は5万件近くの過去最多件数を記録し、検挙数は3323とされています。これは日本でもDVという言葉が定着し、DVは犯罪であるという人々の認識が高まり、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(いわゆるDV保護法)」が、昨年2014年に制定及び改定されたことも大きく影響しているかと思われます。

本来心の拠り所となるべく家庭や親しい関係が、安全な場所でなくなる時はどのような状態なのでしょうか?DVの中には稀に女性から男性への暴力も含まれますが、内閣府男女共同参画局の調査によると、男性に比べ女性の方が、配偶者から暴力を何度も受け、その行為によって命の危険を感じ、医師の治療が必要となる程度の怪我をしており、その暴力は身体的、性的、精神的な暴力が重複している場合が多いとしています。JSSのDVに関わるご相談にもこの傾向がありますので、この記事ではDVの大多数を占める男性から女性への暴力に焦点を当てることにします。

男性から女性への暴力はなぜ問題なのでしょうか?それは男性が女性に比べ体が大きく力が強いという肉体的な優位さ、女性よりも経済力を持つことが多いという経済的な優位さなどを「力」として行使し、女性を支配しようとして振舞う暴力だからです。DVは男性の年齢、教育レベル、職業、文化的バックグラウンドに関係なく起きています。暴力を振るう加害者は、「お前がそうさせる」、「お前が言うことを聞かないから」などの理由づけをして暴力を正当化させます。但しどのような場合においても、責任は暴力を振るう側にあります。また暴力を振るう加害者の飲酒やストレスなどは、DVのきっかけにはなっても、原因ではありません。DVの原因はあくまでも暴力を振るう人の思考・行動選択です。幼少期に親や友人などに暴力を振るわれたり、いじめられたという生育歴も暴力という行動選択に影響を与えることがありますが、同じ生育歴でも、暴力を振るわない人もいます。

DVの暴力は下記のように分類されます:
❖ 「身体的暴力」(殴る、蹴る、引きずり回す、突き飛ばす、首を絞める等);
❖ 「精神的暴力」(無視する、大声でどなる、物を投げたり壊す、交友関係などを細かく監視する、「自殺してやる」と脅して言うことを聞かせようとする、ペットを虐待するなどの行為を繰り返し行う等);
❖ 「言葉の暴力」(どなる、けなす、欠点をあげつらう、価値観を押し付ける);
❖ 「性的暴力」 (避妊に協力しない、性的な行為を強要する等);
❖ 「経済的暴力」(生活費を渡さない、お金を取り上げる、仕事を辞めさせる等);
❖ 「社会的隔離 (外出を妨害する、行動を監視する、移住の申請や、在留社会に適応するためのサポート(カナダの場合には英語習得など)に協力しない、「オレから逃げたら警察に捕まる/永住権や在留許可がなくなる」などと言って脅かす、民族的・人種的バックグラウンドを尊重せずに人格を否定する等);
❖ 「子供を利用した暴力」(子供に会わせない、子供の行動を理由になじる)

これらの被害者の受ける暴力は重複していることが多く、下記のような3つの共通点があります:
➢ 暴力は被害者に恐怖を与える。
➢暴力は被害者から安心、自信、自由を奪う。
➢ 暴力は相手をコントロールするための手段として行使される。

DVは一定のサイクルがあり、蓄積期→爆発期→安定期(ハネムーン期と呼ばれる、暴力後に加害者が優しくなる時期)のサイクルを繰り返し、個人差はあっても、時が進むごとにそのサイクルの循環が早くなり、暴力の度合いがエスカレートする傾向があります。またDVは女性の妊娠をきっかけに始まることも多いとされ、女性がその暴力的な関係から去ろうとする時(家を出る、離婚の手続きを始める、新しい関係を見つける等)に、暴力が激しくなる傾向があります。下記のJSSウェブサイト内にあるProject Blue Skyのサイト内にも、DVに関するさらなる情報をご覧いただけます。

JSS始め下記の機関では、相談者がDVから安全に抜け出す為の脱出・保護プランのお手伝い及び精神的なサポートや情報収集、情報提供、関係機関との連絡連携の援助を通じた実質的なサポートを提供しています。また周りに「DVの被害を受けているのでは?」と思われる方がいる場合には、JSSを含む相談機関があることを是非教えて差し上げてください。被害を受けておられる本人が連絡を取ることを躊躇される場合も多いかと思います。その場合にはその方に代わって各機関の受付に関する情報を入手してあげたり、「あなたは決して悪くない」と勇気づけながら、その方が一人で問題を抱え込まずに助けを求めることが出来るように、サポートの手を差し伸べてあげてください。また、暴力を受けているDV被害者本人の了解を得ずに、暴力を奮う相手に直接注意したり、当事者達の親や家族・親戚に相談や報告をしたり、警察に相談することは、さらに状況が悪化させる可能性が高いので避けるほうが良いでしょう。

長期にわたり暴力を受け続ける環境にいると、暴力を振るう相手が繰り返し言うこと(例:「お前はオレがいないと何もできない」など)を信じるようになります。その結果、自尊心や自信がなくなり、自分ひとりの力ではその状況から抜け出せない心理状態に追い込まれていき、自らアクションを起こすことが難しいことが多々あるようです。このようなケースにおいては、周りの親しい方や専門機関のサポートを受け、暴力を受けている本人が「自分はDVの被害者である」という自覚を持つことがDVのない生活へと進んでいく上での大きな第一歩となります。

RESOURCES:

Police: 911
(緊急でない場合は416-808-2222)

Assaulted Women’s Helpline: 416-863-0511 (Toll Free: 1-866-863-0511)
Mobile: #SAFE(#7233)
24時間対応のDV被害者の緊急サポート及びシェルターやその他関連機関への照会

Community Information Toronto: 211
(トロント市内の社会福祉リソースの窓口)

The 519 Anti-Violence Program:416-392-6874
レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスセクシュアル、トランスジェンダー、インターセクシュアルなどのDV被害者へのサポート

Barbra Schlifer Commemorative Clinic: 416-329-9149
DV被害者女性の法律相談サポート及びカウンセリング

ジャパニーズ・ソーシャル・サービス (JSS): 416-385-9200

プロジェクト・ブルー・スカイ(Project Blue Sky)

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