私とソーシャルワーク

ジーン ピアサ:  前 JSSカウンセラーJean Peasah

昭和一桁生まれの私は、皆が遠い昔の歴史だと思う事柄が、どうしてもその様には思えない場合がよくある。私にすればまだ現在なのである。例えばマスコミで今年は第二次世界大戦終了後70年と報じられると、先ずもうそんなに時間がたったのかと驚き、年寄り気分になる。次にその報道が引き金となり、当時の自分を思い起こすのである。年齢を重ねる程引き金の作用する機会が増えるが、自然は良く出来ている。記憶に詳細さが欠けてくるのに加えて、喜怒哀楽の感情が平たくなる様に思える。私のその様な思い出とボランティアに関しての一言を述べさせて頂きたいと思う。

私はバンクーバ-で生まれ、大戦中は母と子供三人、レモンクリーク収容所で過ごした。父は戦時中アングラー に拘束されており、一家が日本に送還される昭和21年10月直前に、レモンクリークで合流した。十三になったばかりで段々家族より友人関係を重んじる時期に入りつつあった私は、学校以外で友達と遊ぶのが不可能だと知り寂しかった。放課後は皆家の手伝いをし、遊ぶこと等考えられ無かったのである。後で考えると私は幸せでもあった。交友に費やす時間の代りホームルームの先生が放課後個人的に教えてくれた勉強に集中出来た。小学3年の国語の教科書から始めて、毎日では無かったが、多分2―3ヶ月間この女性教師は続けてくれたと覚えている。彼女が私に与えた影響は大きく、感謝している。また友達と時間を過ごす代わりに伝統的な田舎文化にひたることが出来た。当時はまだ急激な社会変化は始まって居らず、娘としての役割や期待等比較的明確に規制されており、順応する助けとなった。進学のため上京するころには自分は岡山県人と自覚するに至った。

子供の頃から私は人の手助けになる仕事に就きたいと思っていた。収容所の日曜学校で教わった白人の宣教師や先にも述べた先生の影響だと思う。それに加えて人の手助けをする者を主人公とする小説等を読み、自分もやりたいと幼稚でロマンチックなことを漠然と考えていた。進学して初めてソーシャルワークと云う職業があると知り、それに就く為に何年か後にトロントへ来た。

ソーシャルワーカーとして私は数ヶ国で働いたり教えたりする機会を得た。1960年の半ばには京都で頑張ったのを憶えている。まだソーシャルワークやカウンセリングの知られていない頃で、家族以外の、しかもあかの他人に悩みを告げるのは厳禁とされており、苦労したのを思い出す。アフリカのガーナでも15年間、トロントで出合った主人と暮らし、異なる環境で仕事をし、得るところが多々あったと思う。

ソーシャルワーカーは病院で医療チームの一員を務めたり、役所で社会福祉関係の政策作成に関与し、その履行に携わったり等と、職場は色々である。最も知られるのがJSSの様な地域社会、グループ、個人其々のニーズの対応にかかわっている機関だと思う。自分の経験から強く感じるのは、JSSの様な規模の小さい機関には確乎たる利点があると云うことである。手の込んだ組織である病院や行政機関、又は大規模な福祉機関に比べ、より早急に、より的確に対応できる可能性があるからである。その為には機関の活動に関心を持ち活躍する理事会が必要となる。

JSSはボランティアの支えにより成り立っている感が多分にある。理事をはじめとして、グループの運営、チャイルドケーア、事務、翻訳、その他色々なところで活躍し、資金不足のJSSは大変に助かっている。カウンセリングは勿論専門家の領域だが、その他は殆ど、ボランティアの支援によりサービスの提供が可能だといっても過言ではない。

自分のボランティア経験を私は大切に思っている。学生の時、滋賀県にある知恵遅れの子供の施設でモッコを担いで土管埋めを手伝った。あまり子供達との交わりは無かったが智慧おくれの子どもに関心が湧き、卒業後、その様な子供のため厚生省が初めて設立した秩父学園に就職した。私の場合はボランティアをした時の経験が直接この子供等とその親たちの間でソーシャルワークがしたいと思ったきっかけだったのである。ボランティアをすると、この様に新しい知識や経験を得るだけでは無く、自分の強み、弱点、興味など分かってきたりする。それに加え、手助けをしていると思うと気分も良く、自信にもつながる。JSSの場合は日本語が使えるし、ボランティア仲間の友達が出来る等の利点もある。

ボランティアの経験を大切に思うと同時に、頻繁に数が多くなった引き金であれこれ出てくる思いの中で、ソーシャルワーカーとして働いた長い年月を思い出すこの頃である。

<編集部注>

ピアサさんは、日系社会での長年のボランティア活動やカンセラーとしての功績が認められ、今回6月2日に日本領事館より、総領事表彰を受けることになっています。

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