健康: 脂肪摂取は健康に悪いのでしょうか?

医学生物物理学博士 マシュー・ヤン

 

心臓疾患と脳卒中を含む心血管疾患は世界の死因のトップです。毎年1,730万人もの方が亡くなっています1,2

心血管疾患のリスクを減らすためには乳製品や赤身の肉、小麦粉を使用した甘い食べ物などの飽和脂肪酸の多い食品摂取を減らすことが一般的に知られています。

米国心臓協会や欧州食品安全機関、食料農業機関、世界保健機構などの様々な機関の専門家は毎日の飽和脂肪酸の摂取量を10%以下に減らすことを推奨しています1,2

私たちの多くは、何の疑問も抱かぬまま、この専門家の推奨を受け入れてきました。しかしこれを裏付ける確証が実際にあるのでしょうか?

事実にショックを受けるかも知れません

人口集団ベースの研究において、現時点では、飽和脂肪酸の摂取を減らすことが心血管疾患のリスクを減らすと言う、明らかな証拠はありません1,4,7

実際には、そのような証拠が存在したことはありません1!

脂肪や飽和脂肪酸摂取量を減らすことに関する食生活指針が初めて米国や英国で発表された1970年代や1980年代においても、人口集団ベースの研究がこの推奨を裏付けていたわけではありません1

では何を食べればよいのでしょうか?

現在、以下のことが心血管疾患に罹るリスクを減らすと考えられています。

  • 飽和脂肪酸の高い食品摂取量を減らす。
  • 不飽和脂肪酸、特にオメガ3脂肪酸やエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)を摂取するようにする1,4,7

EPAとDHAは心臓血管の健康に効果があることが明らかになっています。これらは脂っこい魚のような海産食品に多く含まれています1,4,7

EPAとDHAを摂取すると以下の効果があることが明らかになっています。

  • 血圧を下げる
  • 異常な心拍と血栓の形成予防1,4,7
  • 動脈硬化性プラークの形成抑制 6,7
  • 抗炎症作用1,4,7

秘密のレシピ

残念ながら、どの脂肪酸が最も健康的であるかということは判明していません4。例えば、飽和脂肪酸が豊富に含まれている乳製品は、人口集団ベースの研究によると、人間の心臓血管の健康には中立か、肯定的な影響があることが分かっています4,8。しかしながら、この影響の裏にあるメカニズムは未だ分かっていません8

今後の研究がこれらの疑問を解決し、食生活により、如何に心臓血管の健康をより良く維持できるのかが明らかになるでしょう。

 

執筆者について

医学生物物理学博士 マシュー・ヤン

私は、最近トロント大学の医学生物物理学部より博士号を授与された、医事文筆家志望者です。私の研究専門分野は血管分子生物学ですが、人間の健康と疾患に関する研究の全ての面に興味があります。余暇にはジョギングをしたり、マーシャルアーツを練習したり、カラオケで歌います。

今後の記事に取り上げて欲しい医学に関する質問は、info@jss.caまでメールをお願いします。

 

参考文献

  1. Fattore E, Massa E. Dietary fats and cardiovascular health: a summary of the scientific evidence and current debate. https://doi.org/10.1080/09637486.2018.1455813. 2018:1–12.
  2. Sacks FM, Lichtenstein AH, Wu JHY, Appel LJ, Creager MA, Kris-Etherton PM, Miller M, Rimm EB, Rudel LL, Robinson JG, Stone NJ, Van Horn L V. Dietary fats and cardiovascular disease: A presidential advisory from the American Heart Association. Circulation. 2017;136(3):e1–e23.
  3. Blackburn H. 20th-century “medical Marco Polos” in the origins of preventive cardiology and cardiovascular disease epidemiology. American Journal of Cardiology. 2012;109(5):756–767.
  4. Ruiz-Núñez B, Dijck-Brouwer DAJ, Muskiet FAJ. The relation of saturated fatty acids with low-grade inflammation and cardiovascular disease. Journal of Nutritional Biochemistry. 2016;36:1–20.
  5. Ghosh A, Gao L, Thakur A, Siu PM, Lai CWK. Role of free fatty acids in endothelial dysfunction. Journal of Biomedical Science. 2017;24(1):1–15.
  6. Rogero M, Calder P. Obesity, Inflammation, Toll-Like Receptor 4 and Fatty Acids. Nutrients. 2018;10(4):432.
  7. F.A. Muskiet. Pathophysiology and evolutionary aspects of dietary fats and long chain polyunsaturated fatty acids across the life cycle. Fat Detection. Taste, Texture, and Post Ingestive Effects. 2010:19–79.
  8. Lordan R, Tsoupras A, Mitra B, Zabetakis I. Dairy Fats and Cardiovascular Disease: Do We Really Need to Be Concerned? Foods. 2018;7(3):29.

Website Designed by DESIGN YOKO

Top