コミュニティーにおける日本語通訳者の必要性

宮田美奈子 法廷通訳Picture-MinakoMiyata1

現在トロントでは日本語通訳者不足が問題となっている。先日も某病院で日本人患者が、事前に日本語通訳者をリクエストしたにもかかわらず、日本語通訳者手配されなかった。また、別言語の通訳者で日本語を話す通訳者が派遣されてきたという話も多く聞く。この種の通訳者は日頃日本語を使用していない為、日本語訳自体に問題があり、結果的に無意味なセッションになってしまうようだ。

日本語通訳者が少ないゆえに、以上のような問題は以前から存在していた。カナダのような英語圏では就職すると必然的に英語を話すことになるから、「英語を遣う職業イコール通訳翻訳」ではなく、わざわざ収入が安定しない通訳翻訳業を選ばないのであろう。一方日本では英語を使う仕事に就こうとすると、やはり通訳や翻訳という仕事を選ぶ人が多い。

通訳にはいくつかの種類があるが、現在不足してるのはコミュニティー通訳者である。複数のエージェンシーが日本語通訳者名簿をシェアしているほどだ。コミュニティー通訳とは暮らしの中で英語を第一言語としない人々が直面する、言葉の障壁を乗り越える手助けをする通訳のことで、オンタリオ州で通訳の対象となるのは、離婚、夫婦関係、育児、教育、医療、警察沙汰など「日々の暮らしに密接に結びついた諸問題」(注1)である。

オンタリオ州では「コミュニティー通訳に関する制度(養成プログラム、認定試験、倫理規定)」(注2)が整備されており、コミュニティー通訳養成プログラムを設けている教育機関が多数ある。しかし今年に入ってから新しい認定制度が導入されたゆえ、教育機関を選ぶ際には注意が必要だ(http://www.occi.ca/)。認定試験合格後にエージェンシー等に登録し、仕事を受けることになる。

仕事量だが、言語や経験によって左右される。車を運転したり、業務時間に柔軟性も持って対応できたり、クライアントから指名を受けたりすると、仕事量増加につながる。また、登録するエージェンシーを増やすことも大切である。毎年コミュニティー通訳者のためのジョブフェアがあり、多くのエージェンシーのブースが並ぶ。履歴書持参で参加することをお勧めする。医療通訳に興味がある方は、通訳を一括して手配する機関や病院に直接連絡を取ることも良い。登録できる機関名を養成プログラム講師に聞くこともできる。とにかく積極的に動くことが大切である。

一方で「日本語通訳者になっても仕事ない」という噂があるようだが、フルタイムのポジションが見つかりやすいのは公用語の仏語通訳者くらいであり、他言語では多くの通訳者はフリーランサーである。公的資格を持っていても、他の仕事と兼任したり、受ける仕事の多様化を図りながら、不安定ながらも一定の収入を得ているのが実情である。毎月安定した収入を望む人には向かない。フリーランサーの良い点は、スケジュール管理がしやすいことである。また就業形態も様々で、現在では電話・ビデオ通訳の仕事も増えてきている。定年もない。

最後に様々な場所で通訳サービスを受ける方にお願いがある。通訳の日本語訳に不安を感じたら(日本語訳が理解できない等)公的機関の担当者に直ちに伝えて頂きたい。担当者は現場で話されていることを全て理解してもらいたいために通訳者を雇う。だから我慢する必要などない。本人が声を上げなければ何も変わらない。

注:この記事を書くにあたり、東京にある株式会社ミーハングループ様からお話を伺った。ここにお礼を申しあげる。また「通訳の役割」 (高橋正明2009年) から数か所直接引用があることを記しておく。(注1と注2)

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