カウンセラーのコーナー:「カナダの医療システムとオンタリオのコミュニティー・ヘルス・センター」

Junko_Mifune三船純子(JSSカウンセラー)
日本とは違うカナダの医療システムに、戸惑われる方も多いかと思います。今回はカナダの医療制度、及びオンタリオ州の医療制度についてご紹介させていただきます。
カナダ医療制度全般については、下記の在カナダ日本国大使館のサイトにてわかりやすく説明がされておりますので、ご参照ください。2013年7月6日にトロント商工会主催で開催された医療制度セミナーにて、Dr. Jonathan Carr(トロント家庭医)及び、Dr.伊藤真也・トロント小児病院小児科教授が講演してくださった内容を、大使館から掲載許可を頂き、ご紹介させていただきます。伊藤先生には、JSS主催の医療情報セミナーに於いても、過去に何度か講演していただき、役に立つ情報をご説明頂きました。
http://www.ca.emb-japan.go.jp/JapaneseSite/Medical/general-info.html#seminar
さて御存知ない方も多いようですが、オンタリオにはその他にもオンタリオ州厚生省(local Health Integration Network)が運営管轄をする、コミュニティー・ヘルス・センター (CHC)が108箇所あります。CHCは地域に根付いた、地域住民のニーズに合った総合的な医療及び保健衛生の提供を目標としています。それぞれのCHCには管轄地域があり、管轄地域の住民が管轄のCHCへアクセスが出来るシステムになっています。
地域の住民の中でも、CHCは特に通常の医療システムにアクセスしにくい立場にいる新移住者、心身及び精神的障害者、低所得者、高齢者、ファミリードクターのいない方(その方の疾患や健康状態などにより、医師に会う順番が決められます)などの方々へのサービス提供を重要視しています。医療サービスを受ける際に、OHIPの所持を確認されますが、難民滞在などの理由でOHIPがない方でも、無料で医療サービスを提供されますし、様々なプログラムも無料で提供しています。病気の治療だけではなく、住民の声が反映される医療保険及びプログラムや予防重視の活動は、各CHCの総合医療・保険チーム(医師、看護師、栄養士、理学療法士、行動療法士、足病医、ソーシャルワーカーなど)によって無料で提供されます。
また住民主導による共同事業(食糧配給プロジェクトや共同ガーデニング、保健・医療へのアクセス改善や公正性を高める為に公共政策変更を働きかける活動)などにも積極的に取り組んでいます。地域住民が交流する場を提供し、相互啓発をしながら共同参加していくことにより、地域における健康管理を促進していくことが、地域住民個人や地域全体の社会的及び経済的発展にも繋がるという考えが核になっています。
人々の健康状態は、医療サービスへアクセス出来るという環境だけではなく、所得レベル、教育レベル、雇用状態、就労条件、幼年期の発達状態、食糧保障状態、住宅供給状態、社会的排除、社会的保障のネットワーク、カナダ先住民であるかどうか、性別、人種や人種差別、文化や障害などの、私達の健康状態を規定する経済的、社会的条件によっても大きく影響されると言うことに焦点を当てたサービスが、CHCの運営の基盤となっています。
CHCが促進する地域に根付いた保険医療と地域のニーズを反映したプログラムや地域住民との協同事業の取り組みは、経費が嵩む緊急医療への不必要なアクセスなどが減少することにも繋がり、経済的にも有益な医療システムであることも証明され、注目されるようになってきています。殆どのCHCでは、通訳のサービスもアレンジ可能です。
最寄りのCHCは、下記のAssociation of Ontario Health Centres のFind a Centreのセクションから見つけることができます。(在住地またはポスタルコードを入力して検索してください。)
http://aohc.org/