オンタリオ州の裁判費用の変更

以下の情報は、Community Legal Education Ontario (CLEO)より許可を得て、「オンタリオ州の裁判費用の変更」(2019年5月発行)を翻訳・掲載しています。翻訳の質に関しては、Japanese Social Services が責任を担っており、CLEO の関与するところではありません。

 

2019年4月1日より、オンタリオ州の裁判所を利用する時に支払う費用が値上がりしました。たった1ドルの値上げのケースもあれば、以前より2倍の費用がかかるケースもあります。
今月の「On the Radar」では、値上がりした項目のいくつかとその費用を負担するのが難しい場合にどうすればいいのかをまとめました。

値上げの影響を受ける裁判所の種類

次の3種類の裁判所でかかる費用が値上がりします。
1、     Small claims courts(スモール・クレイムズ・コート/少額請求裁判所)は、最大$25,000までの請求、または同額の財産の返還要求に対応します。
2、     Civil courts(シビル・コート/民事裁判所)は、$25,000以上の請求に対応します。また、いくつかのCivil courtsでは他の裁判所や裁決機関(tribunals)からの異議申し立てを聴取します。
3、     Family courts(ファミリー・コート/家庭裁判所)は、養育費や養育同意書、配偶者扶助、財産分与、離婚の問題などに対応します。

Tribunal(裁決機関)による費用の変更

オンタリオ州の多くの法律案件は、裁判所の代わりにtribunal(トライビューナル/裁決機関)で対応しています。tribunalは、4月1日からの値上げの影響は受けませんでした。
それぞれのtribunalは、独自の費用を設定しています。例えば、Landlord and Tenant Board (家主借主委員会)は、テナントからの申請のほとんどに$50を請求します。 Social Benefits Tribunal (社会扶助裁決機関)とHuman Rights Tribunal of Ontario(オンタリオ人権裁決機関)は無料です。
しかし、tribunalの決定に対し異議申し立てをすることは、裁判所で争うことを意味します。その場合は、4月1日からの費用値上げの影響を受けます

新しい裁判手数料(一部)

法律案件は、通常いくつかの異なる手順を踏みます。裁判所では、ほとんどの手順に手数料がかかります。
裁判手数料のほとんどは、司法運営法の規則 (regulation to the Administration of Justice Act)に記載されています。
いくつかの事例をあげて、新旧の費用を下記で紹介します。

Small claims courtで提訴する場合は、$95から$102への値上げ
Small claims courtに答弁書を提出する(filing a defence)場合は、$50から$73への値上げ
Family courtに離婚申請書を提出する(filing an application for divorce)場合は、$167から$212への値上げ
Small claims court で裁判の予約をする(scheduling a trial)場合は、$145から$290へ2倍の値上げ
・tribunalの決定を控訴する(appealing a decision)場合は、$220から$229への値上げ
控訴案件を聴取してもらうために必要な追加書類、いわゆる「申し分のない」控訴書類 ( “perfecting”  the appeal )、を提出する場合は、$405から$608への値上げ

費用が払えない場合

低所得の方は、案件に関連する費用を払う必要がない「費用の免除(fee waiver)」を受けることができます。免除に該当するのは、次の3つです。

1.収入と資産の基準
収入と資産がある一定額を下回っている場合は、費用免除の対象となります。4月1日の裁判費用値上がりに伴い、この一定額も値上がりしました。つまり、費用の免除対象者が増えたことになります。
対象となる収入基準は、世帯人数によって異なります。
単身世帯は、年収が$32,000未満でなければなりません。
2世帯は$46,800、3世帯は$54,000、4世帯は$64,800、5以上の場合は$75,600が上限になります。例え低所得であっても、多くの資産を所有している場合は免除対象外となります。
世帯人数に関わらず、免除対象となる「純資産(net worth)」の所有上限は$10,500です。純資産とは、所有しているものを全て売却し、負債を全て支払った後に残る資産のことです。
多くの世帯は「当座資産(liquid assets)」を所有することができ、$2,600までは免除対象となります。当座資産とは、現金や簡単に現金化できるもののことです。

2.Legal aid (リーガル・エイド/法律支援)
Legal Aid Ontario(オンタリオ法律支援サービス)community legal clinic (地域法律相談所)から案件の援助が認められている場合は、自動的に裁判費用の免除対象になります。収入・資産水準の条件を満たす必要はありません。

3.収入源
世帯の主な収入源が次のうち1つ以上当てはまる場合は、自動的に費用免除の対象となります。
・Ontario Works(オンタリオ・ワークス/オンタリオ州生活保護)
・Ontario Disability Support Program(オンタリオ州障がい支援プログラム)
・Canada Pension Plan (カナダ厚生年金)
・Old Age Security plus Guaranteed Income Supplement (老齢年金とGIS 年金支援給付金 を両方受給)
・War Veterans Allowance  (退役軍人手当)

費用免除の申請方法

上記3つのいずれかに当てはまる場合は、「登録係、事務官または執行官宛費用免除申請書  (Fee Waiver Request to Clerk, Registrar or Sheriff)」に記入し、裁判所事務所へ提出します。費用免除が認定されると証明書(certificate)が発行され、同じ裁判案件で費用の支払いが必要な際には、その証明書を係官に提示します。
該当していなくても、裁判官に費用の免除をお願いすることができます。その場合は、「裁判所宛費用免除申請書 (Fee Waiver Request to Court)」に記入します。
出来るだけ早く申請することが重要です。費用免除になった場合、すでに支払った費用の払い戻しはされません。

この記事は一般法的情報をお知らせするもので、特定の状況についての法的アドバイスを得ることに替わるものではありません。

原文: https://mailchi.mp/cleo/on-the-radar-changes-to-fees-in-ontario-courts