女性がスポンサーである配偶者、または配偶者から家庭内暴力を受けている場合


< 免責事項 Disclaimer >
この「女性と家庭内暴力、そして移民」は、CLEO (Community Legal Education Ontario / Éducation Juridique Communautaire Ontario) が2017年5月に発行した記事「Family violence when a woman is sponsored by a spouse or partner」の日本語版です。 翻訳の正確性に関しては、CLEOの許可を得ているJapanese Social Services (JSS) が全責任を担い、CLEOの関与するところではありません。
This is a translation of “ Family violence when a woman is sponsored by a spouse or partner ” dated May, 2017, produced in English by CLEO (Community Legal Education Ontario/ Éducation juridique communautaire Ontario). Japanese Social Services (JSS) is wholly responsible for the accuracy of this translation, produced with permission of CLEO.
この情報は、下記に該当する女性に携わるフロント・ライン・ワーカー (front-line workers)とその支持者のためのものです。

• 配偶者かパートナーによってスポンサーされた、またはされている、そして
• 家庭内暴力を経験している

多くの女性は、配偶者やパートナーによって永住権をスポンサーをされています。この冊子に書かれている情報のほとんどは、「ファミリー・クラス・スポンサーシップ (family class sponsorship) 」に関するものであり、そして、家庭内暴力を経験する女性は、移民法について知る必要があるかもしれません。
カナダの移民法は複雑で、重大なミスを犯すのは簡単です。在留資格に懸念を持つ女性は法的助けを得ようとすることが重要です。

フロント・ライン・ワーカー (front-line workers) はどのようなことができるか?

フロント・ライン・ワーカーとして、在留資格が危険にさらされている可能性のある女性に対して、次のようにして助けることができる可能性があります。

• 法的助言 (legal advice) をいつ、どこで受けられるかを彼女に知らせる
• 彼女がカナダの滞在を許可されるべきだと証明するための書類の収集を手助けする

女性がカナダ市民でない場合、配偶者、またはパートナーのもとを離れることでカナダからの国外退去を命じられるのか?

これは、女性の在留資格によって異なります。

◎ 永住権 (permanent resident status) 
女性が永住権保持者の場合、虐待的な関係から離れることのみで、永住権を剥奪されたり、国外退去を強制されることはありません。これは虐待をしているパートナーが彼女の永住権申請のスポンサーであったとしても同じです。
しかし、そのスポンサーが下記のような報告をしたならば、移民局による調査が行われる場合もあります。

• 関係が偽りのものだった、または
• スポンサーされた女性が、「移民・難民・カナダ市民権 (Immigration, Refugees and citizenship Canada,IRCC) 」に提出した永住権申請書類に必要な情報を書かなかったか、偽りの情報を書いた。

上記のような場合には、永住権を失うこともあります。これらに該当する可能性がある女性は、法的助言を求めてください。
永住権を持つ女性が彼女のスポンサーと離別した後に、別の人物との新しい関係を始めることを選択するかもしれません。しかし、その場合は、永住者になった日から5年後まで、彼女は新しい配偶者、またはパートナーをスポンサーすることはできません。

◎ 条件付き永住権 (Conditional permanent resident status) 
一部のスポンサーされた女性は「条件付き」で永住権が与えられました。条件付き永住権を保持している女性は、永住権を取得した日から2年間は、スポンサーと同居することとされていました。
2年未満に離別した女性は、在留資格を失い、カナダから国外退去を強いられる危険にさらされていました。しかし、虐待やネグレクトのための別離ならば、IRCCは、2年間同居の条件を無効とすることができました。
2017年4月に、カナダ政府は、スポンサーと2年間同居しなければならないという条件を排除しました。スポンサーされている女性は、この条件なしで永住権を取得できます。
そして、条件付き永住権でカナダにいる女性は、現在条件なしで永住権を取得しています。これはたとえ女性が2年の期間内に別離していたとしてもほとんどのケースで適用されています。しかしながら、女性がカナダからの国外退去を命じられており、そして下記に該当する場合には適用されません。

• 退去命令に異議申し立て (appeal) しなかった、または
• 退去命令に対し Immigration Appeal Division に異議申し立てしたが、却下された

このどちらかの状況の女性は、この後どのような選択肢があるかについて法的助言を得たほうが良いでしょう。

◎ スポンサーシップを申請中 (Sponsorship application in process) 
既にカナダに滞在している女性は、「カナダ内での配偶者またはコモンローパートナークラス (Spouse or Common‑law Partner in Canada class) 」として知られているカテゴリーの下で、既に申請中かもしれません。女性とスポンサーが申請書を一緒に作成し、カナダ国内で手続きされるものです。これは時に「国内・配偶者スポンサーシップ (inland spousal sponsorship) 」とも呼ばれています。
永住権申請は、手続きに時間がかかります。もし、永住権取得の手続きが進行している間に、配偶者、またはパートナーがスポンサーをすることを取り下げたり、ふたりが関係を解消することになった場合、彼女は「Spouse or Common‑law Partner in Canada class」での永住権を申請する資格を失い、国外退去を余儀なくされる場合もあります。
もし、このカテゴリーでスポンサーされている女性が、関係を解消した、または、解消することを考えている場合は、ただちに法的助言を得なければなりません。彼女は人道的・同情的 (humanitarian and compassionate, H&C)理由でカナダに留まることの申請をすることができる場合があります。詳細は、この冊子シリーズの「人道的・同情的 (H&C)申請書の作成、Making a humanitarian and compassionate (H&C) application」を参照してください。

◎その他の滞在資格、または、滞在許可を持っていない場合 (Other types of status or no status) 
カナダには永住権を持たずに一時的な滞在資格で滞在している女性が数多くいます。例えば労働ビザや、学生ビザを持っていたり、または観光ビザでカナダに入国を許可されていたりします。
一部の女性は難民申請者として、また別の人たちは一時的な滞在資格の失効後もカナダに滞在している人たちもいるかもしれません。
一時的な滞在資格を持っている、または滞在資格を持っていない女性が、カナダに永住することを希望するなら、どのような選択肢があるのか、法的助言を得ることが必要です。
カナダでの在留資格が不明な女性は、それが何かを知るために、法的援助を得たほうがよいでしょう。
女性を虐待している配偶者やパートナーは、もし女性が虐待を報告したら、彼女をカナダから国外追放すると脅すかもしれませんが、配偶者やパートナーには女性を国外追放する権利はありません。連邦の移民機関 (federal immigration authorities) のみが、国外追放の決定を下すことができるのです。

 法的助けを得る

もし、女性のカナダ滞在が危険にさらされる可能性がある場合、何らかの行動を起こす前に、法的助言を得るべきです。もし女性をスポンサーをした、またはスポンサーになることを約束した配偶者かパートナーによって、その女性や女性の子どもを虐待・ネグレクトをされている場合は法的助言を得るべきです。彼女の状況に影響を及ぼしている法的問題が気づかなくてもあるかもしれないからです。例えば、女性は人権問題があることによりカナダが人々を国外追放できない国の出身であるかもしれません。
特に女性に子供がいる場合には、家族法を専門とする弁護士に相談する必要があるかもしれません。場合によっては、母親を国外へ出すことが、子どもに関する家族法の裁判所命令に反する可能性があるからです。
また、カナダ在留資格のない女性が警察に連絡すれば、警察は移民局へ連絡をするかもしれないということも知っておくべきです。その女性の名前で移民局の令状が出ていれば、警察のデータベースにも表示されるからです。
法的助言を得るために、リーガル・クリニック (legal clinic、法律相談所)、または弁護士に連絡することができます。コミュニティー・リーガル・クリニック (Community legal clinics、地域法律相談所) では低所得者のために無料法律相談を行っていますが、すべてのクリニックが移民問題を扱うというわけではありません。また、トロント、キングストン、オタワ、ウィンザーの大学法律学部では、学生による法律相談所 (Student legal clinics) においても人々を代弁・弁護し、支援しています。
リーガル・クリニックを見つけるには、オンタリオ法律支援サービス (Legal Aid Ontario、LAO) ウェブサイトwww.legalaid.on.caを参照するか、下記に電話してください。

フリーダイヤル : 1-800-668-8258
トロント市内 : 416-979-1446
フリーダイヤルTTY (聴覚障がい者回線) : 1-866-641-8867
トロント市内TTY (聴覚障がい者回線) : 416-598-8867

オンタリオ法律支援サービス (Legal Aid Ontario、LAO) では検索可能な弁護士名簿を備えており、ウェブサイトwww.legalaid.on.ca/en/getting/findingalawyer.asp で法律の分野、地域、言語別に弁護士を検索することができます。

◎法的支援証明書 (Legal Aid Certificate) 
法的支援証明書 (Legal Aid Certificate) は、弁護士のサービスに対して費用をリーガルエイドが支払うという証明書です。LAO (Legal Aid Ontario) は女性の収入、抱えている法的問題に基づいて、その女性が証明書を得る資格があるかどうかを判断します。
家庭内暴力の被害者は、緊急時に法的支援証明書を得ることができる場合があります。証明書を申請したその日に、発行してもららえることもあります。
家庭内暴力の被害者は、LAO (Legal Aid Ontario) の家庭内暴力認定プログラム (Family Violence Authorization Program) の下で、女性シェルターや地域法律相談所 (community legal clinic) を介して証明書の申請をすることができます。このプログラムでは、家庭内暴力の被害者は、弁護士による2時間の無料法律相談を受ける資格があります。家族法と移民法の弁護士からのアドバイスが必要な女性は、両方を依頼することができます。もし、彼女が法的手続きにおいて弁護士を法的代理人として必要とする場合は、まず法的支援証明書 (Legal Aid Certificate) を申請する必要があります。

◎バーバラ・シュライファ―・コメモラティブ・クリニック (Barbra Schlifer Commemorative Clinic) 
この団体では、身体的、性的、精神的な虐待を受けている女性のためのカウンセリング、言語通訳のサービス、家族法と移民法の法的代理人 (legal representation) を無料で提供しています。また刑事事件のケースでは、サマリーアドバイス(一般法律情報と類似ケースを用いての選択肢を提示) や、女性の支援者を提供してくれるかもしれません。コレクトコール (料金相手払い) も受付けることができます。

トロント市内 : 416-323-9149、
トロント市内TTY (聴覚障がい者回線) : 416-323-1361
ウェブサイト : www.schliferclinic.com

◎弁護士紹介サービス (Law Society Referral Service) 
弁護士紹介サービス (Law Society Referral Service) は、あなたの住む地域で30分の無料法律相談を提供している弁護士を紹介してくれるオンラインサービスです。また、あなたの母国語を話す弁護士、法的支援証明書 (Legal Aid Certificate) を受付ける弁護士の紹介を依頼することもできます。また、例えば拘留中であったり、シェルターにいたり、インターネットアクセスのない遠隔地でオンラインサービスを利用できない場合、緊急用電話回線 (crisis line) に電話を掛けることができます。この緊急用電話回線の利用時間は、月曜日から金曜日までの午前9時から午後5時までです。

緊急用電話回線 (crisis line)
フリーダイヤル : 1-855-947-5255
トロント市内 : 416-947-5255
ウェブサイト : www.findlegalhelp.ca

 その他の情報

◎暴行を受けている女性のためのヘルプライン (Assaulted Women’s Helpline) 
このヘルプラインでは、オンタリオ州の女性のために、緊急を要するカウンセリングとシェルターの紹介、法的助言やその他のサービスを1日24時間、週7日行っています。また、17の先住民 (Aboriginal) の言語を含む、100以上の言語で無料で利用できます。
オンタリオ州内に27ヶ所あるこの機関では、虐待されている女性とその子供たちに、州の社会事業省からの資金提供によりTransitional Housing (定住物件に移る前に住み、移るための準備をする場所) を提供しています。これらのサービスにアクセスするには Assaulted Women’s Helpline に連絡してください。

フリーダイヤル : 1-866-863-0511
トロント市内 : 416-863-0511
フリーダイヤルTTY (聴覚障がい者回線) : 1-866-863-7868
トロント市内TTY (聴覚障がい者回線) : 416-364-8762
Bell、Rogers、Fido、またはTelusの携帯電話 : #SAFE (#7233)
ウェブサイト : www.awhl.org

◎Fem’aide (フランス語を話す人のヘルプライン) 
このヘルプラインは、オンタリオ州内のフランス語を話す女性に、女性虐待 (性的暴行を含む) に関するサポート、各種機関・サービスへの情報、照会を提供しており、週7日間、24時間体制で利用できます。

フリーダイヤル : 1-877-336-2433
フリーダイヤルTTY (聴覚障がい者回線) : 1-866-860-7082
ウェブサイト : www.femaide.ca

◎ 211オンタリオ (211 Ontario) 
このウェブサイトには、オンタリオ州内の利用可能なコミュニティーやソーシャルサービス (社会事業・福祉サービス) を見つけるのに役立つオンライン情報があります。
ウェブサイト : www.211ontario.ca

211の情報には、あらゆるソーシャルサービス (社会事業・福祉サービス) への電話紹介サービスも含まれており、年中無休、24時間、150を超える言語で利用できます。

電話番号 : 211

このシリーズの他の書籍
• 人道的、同情的 (H&C) な配慮による移民申請と難民申請の違い (Humanitarian and compassionate (H&C) applications and refugee claims :How are they different
• 人道的、同情的 (H&C) な配慮による移民申請 (Making humanitarian and compassionate(H&C) application )
クレオ関連書籍、ウェブサイト
• 虐待を受けている女性を知っていますか?法的権利のハンドブック (Do you know a woman who is being abused? A legal rights handbook
• ウェブサイト : refugee.cleo.on.ca

 

最後に

※この刊行物には一般的な情報が含まれています。これは、あなたの特定な状況についての法的助言を得る為の代わりになるものではありません。
※この冊子は虐待と家庭内暴力シリーズの一部です。CLEOは他の法律部門の無料情報冊子も発行しています。法律改正に合わせて、刊行物を逐次改定しています。「廃棄表 (Discard List) 」を確認することで、どの刊行物が有効期限がきれていて廃棄すべきかわかります。
注文用紙、または廃棄表 (Discard List) に関してはウェブサイト www.cleo.on.ca を訪問するか、416-408-4420に電話して下さい。

原文: https://www.cleo.on.ca/en/publications/famvio