カウンセラーレポート「所変われば、品変わる」
公家孝典
JSSが対応する、ドメスティックバイオレンスにかかわるケースの数は、ここ数年の平均で80~90ケースになっています。ほとんどのケースは、男性が加害者で、女性が被害者のケースです。しかし、女性が加害者としてチャージされるケースも毎年10件ほどあります。そのほとんどが、日本で育った私たちの感覚からすると、「え?そんなことありえるの?」というようなケースです。
【ケーススタディ1】
カップルでショッピングモールに行った際に、夫がふざけて、妻の脇腹の肉をつまんだ。妻は、頭にきてパースで軽く夫の頭を叩いたところ、そのパースには携帯電話等が入っていて重かったため、夫も怒り、口論になった。周りでそれを見ていたほかのお客さんが警察に通報し、近くにいた警官が現場に来た。それぞれが警官とのインタビューに答え、上記の状況を説明したところ、妻が「凶器による傷害」で逮捕された。
【ケーススタディ2】
夫婦喧嘩になり、彼氏が、リビングのドアを叩きつけるように閉め出て行った。妻も怒りが収まらずに、リビングドアに向かってプラスチックの容器に入ったティッシュの箱をリビングルームのドアに投げつけた。その時、夫がもう一度部屋に戻ろうとしてドアを開けたため、そのティッシュの箱が夫の足に当たった。夫が警察に通報し、現場に来た警官からインタビューを受けた。上記の状況を説明したところ、妻が「凶器による傷害」で逮捕された。
【ケーススタディ3】
公園にいたカップルが喧嘩になり、感情的になったガールフレンドがボーイフレンドに泣きながら縋り付き、彼の胸を叩いた。公園にいたほかの人が、女性が男性にいじめられていると思い、警察に通報し、近くにいた警官が現場に来た。それぞれが警官とのインタビューに答え、上記の状況を説明したところ、ガールフレンドが「傷害」で逮捕された。
その後どうなったかと言えば、どのケースも、加害者である女性は起訴され、裁判になりましたが、有罪判決にはなりませんでした。しかし、有罪判決にはならなかったとは言え、どの女性も数か月間はパートナーと一緒に住んでいた家には戻れず、数千ドルの弁護士費用がかかりました。
どのケースも、日本であれば、おそらく女性が逮捕されるという状況にはならないですよね。
『「ところ変われば、品変わる」ので、注意しましょう!』というお話でした。