ケース1:ドメスティックバイオレンス
主訴:夫からの激しいドメスティックバイオレンス(夫婦間・パートナー間の暴力)
相談者:日本人女性(カナダの永住権有・子供有)
相談者への個人カウンセリング:
- 相談者が受けてきた精神的ショックの緩和
- 現在相談者および子供が置かれている状況の正しい理解の促進(暴力的な夫のマインドコントロール下にある場合も多いので-例:お前はオレがいなければ生きていくことはできない/オレと別れたら子供と二度と会えなくしてやる、などなど)
- 相談者がこれから取れうるオプションを出来るだけ明確にし、どのオプションが相談者自身と子供にとってベストなオプションであるかを見極めるためのサポート
- 居住環境および生活環境が落ち着いてきたら、長期にわたるDV(ドメスティックバイオレンス)の影響で低下しているセルフ・エスティームの向上を図るためのカウンセリングの提供
相談者の子供への個人カウンセリング:
もし、子供も暴力を受けていたり、父母間の暴力を目の当たりにしてきていることで精神的なショックがある場合には、子供へもカウンセリングを提供する。(子供が日本語のほうが強い場合はもちろんJSSがカウンセリングを担当することが多くなる。また、トロントにはDVを経験した子供へのサポートに特化したカウンセリングエージェンシーもいくつかあるが、ほぼどのエージェンシーも半年以上のウェイティングリストがあるため、カナダ生まれの日本語より英語のほうが強い子供でもJSSが英語でカウンセリングを提供することは少なくない。)
相談者とその子供へのファミリーカウンセリング:
もし、ドメスティックバイオレンスの悪影響で、相談者である母親と子供の間の親子関係がこじれているような場合には、JSSはその関係をより健康的な形に戻すためにファミリーカウンセリング(親子カウンセリング)を提供する。
ソーシャルワーク:相談者の決断に応じて、JSSが連絡・連携をとりうる外部機関
- 病院(相談者、または子供に怪我がある場合)
- Police(相談者が、暴力を受けたことを警察に通報したい場合、および子供への暴力もあった場合)
- Children’s Aid Society(子供への暴力があった場合)
- Family Shelter(相談者が、暴力的な夫のもとを離れ緊急に避難したい場合)
- Family Lawyer(相談者が、暴力的な夫との別居、離婚を進める場合)
- Legal Aid(相談者が、個人的にFamily Lawyerを雇うことが金銭的に困難な場合)
– Ontario Works (相談者に収入や預金がなく、金銭的に困窮している場合)
ケース2:シニアサポート
カナダに全く身寄りが無く、病気や高齢で余命わずかな相談者の残り少ない時間にJSSがサービスを提供し、その最後を看取るようなケースが今年度は2件ありました。そのうちの1件では、末期がんでホスピスで過ごされていた相談者の最後の3カ月ほどの間、「カウンセリング」とこの相談者の最後の希望であった「日本食の差し入れ」をJSSのスタッフとボランティアがフル稼働で提供し、亡くなった後のすべての作業もJSSのスタッフが主導しました。
もう一方のケースでは、高齢で全く身寄りが無く、英語がほとんど話せない長年にわたる相談者に「カウンセリング」と「診察時の通訳」を提供し、亡くなった後の葬儀・埋葬までJSSが主導いたしました。このようなケースはGTAの日系コミュニティーの高齢化が進んでいることもあり、今後さらに増えていくものと予想しております。
ケース3:子育てサポート
新しい命の誕生に関わるケースもあります。たいていのケースは、相談者が妊娠しているがワーキングホリデーや留学などの一時滞在ビザで滞在中のOHIPの無い場合、おなかの子供の父親が責任ある対応を取れない場合、またはその両方が当てはまる場合です。さらに、おなかの子供の父親から相談者への暴力がある場合も多々あります。特に相談者のカナダでのステータスが不安定な場合、まず妊娠している相談者が産むか産まないかを決めるまでにたくさんのカウンセリングを要することが多いです。「産む」ということが決定されると、次はカナダで産むのか、日本で産むのかをカウンセリングを通じて決めていくことになります。そこで、「カナダで出産する」という方向に話が進んでいくと、外部の関係諸機関と連絡・連携をとる必要が出てくるので、JSSカウンセラーはソーシャルワークの領域の多大なサポートを提供することになります。外部の関係諸機関の例として、ファミリードクター、ミッドワイフ(助産婦)、女性擁護団体、家庭法の弁護士、移民法の弁護士、リーガルエイド・オンタリオ、ファミリーシェルターなどが挙げられます。
ケース4:「いじめ」に苦しむ児童カウンセリング
学校での「いじめ」に苦しんでいる学齢児童にカウンセリングを提供することもありますが、日本ほど多くないとは言え、カナダでもいじめを苦にして自殺する学齢児童が皆無ではないことを考えると、このようなケースも「命に関わるケース」といえますよね。JSSからのサポートが特に重要になるのは、そのいじめにあっている子供およびその親御さんがカナダに来てまだ間もなく、英語でのコミュニケーションが難しいケースですね。いじめのケースでは被害にあっている子供へのカウンセリング提供はもちろんですが、JSSカウンセラーがその子供の通っている学校の校長先生やスクールカウンセラーと連絡・連携を取り対応することも多いです。