JSSプログラムの紹介「アムロを育てる会」

アムロを育てる会
代表 趙理恵子

「アムロを育てる会」って?

「アムロを育てる会」は、2011年9月26日と27日に、御茶ノ水大学大学院教授の榊原洋一先生を講師として実施された講演会「子供の脳と発達」及び相談会を機に発足した、発達障碍の子を持つ親達の自助グループです。卒業していかれる方もある一方、新しく入会される方もあり、会員は13名前後を維持しています。

「アムロ」という言葉に馴染みがない方もいらっしゃると思います。30年以上前に一世を風靡したアニメ「機動戦士ガンダム」の主人公アムロ・レイのことです。 このテレビシリーズは「ガンダムシリーズ」として今に至るまで連綿と続いており、今や日本のポップカルチャーにとって非常に大きな存在になっています。

主人公アムロ少年は、常人の持たない能力を持っている「ニュータイプ」であるがために宇宙戦争に駆り出されていきます。人々を愛するが故に戦いに身を投じるのですが、常人とかけ離れているが故に、疎外感にも悩まされます。そんな時、同じ「ニュータイプ」と出合います。真に分かり合える2人ですが、結局、敵・味方として戦わなければならなくなります。

このような葛藤の中、成長していく心優しいアムロの姿に、同じように葛藤し続ける、傷つきやすい発達障碍の子供達を重ね見たわけです。発達障碍の子供達の苦悩をより理解し、且つ子供達の秘められた能力を発揮できるよう、社会にも出ていけるようサポートする親達の会をイメージして名づけました。おまけとして、ガンダムのような機械的なものが大好きな発達障碍の子供達にとっても、何か楽しいことを予感させるネーミングかと思います。私達の会は親のためという側面と、子供達のためという側面を併せ持っています。同じ悩みを持った親だから分かり合える親の会、同じタイプだから分かり合える子供達の会、この2本柱をどちらも大切にしていきたいと考えています。

コミュニケーション障碍

発達障碍は外見からではわかりませんし、症状の個人差が大きい、捉え難い障碍だと思います。そんな中でも共通しているのは、コミュニケーションやソーシャルスキルを習得するのが、想像以上に遅いことです。そのためこの子たちは、小さい時から様々な場面で、失敗経験を積み重ね、自尊心を傷つけられ、大きなストレスを抱え込んで大きくなっていきます。

彼らはどんな困難に直面しているのか、どんなに傷ついているのかを伝えるのが非常に下手ですから、心から彼らを援助したいと思っている親や教師さえもが的外れな対応をしてしまいがちです。こんな日々の積み重ねが、学業にも影響しますし、二次的に性格形成に影響することもあるでしょうし、問題が雪だるま式に増大する可能性は大です。

例えば、兄弟姉妹の中で非常に手のかかる障碍児と、そうでない定型発達の子との間に不公平感が生じてしまうこともあり得ます。

夫婦親族間で教育方針を巡って険悪になることもあり得ます。最近は色々な療育方法が開発されてはいますが、まだまだ情報が十分共有されているとは言い難いですし、数値で把握することが難しい障碍ですから、その子に合う療育法かを判断することも素人には容易ではありません。合わない療育方法を鵜呑みにしてしまったり、逆に専門家はあてにならないとばかりに思い込み教育論に固執してしまったりすると、意見の異なる親族間で歩み寄ることが難しくなる可能性もあります。その為に親子共に日々の大きなストレスに追いつめられ、どこまで行っても出口のない迷路をさまよっているような感覚に、陥るものです。

「アムロを育てる会」の存在意義

私たちは月に1度集まって、日常を吐露し息抜きをしています。冷ややかな態度に曝さらされることなく、あるがままを話せますし、「あるある、よくある。」「だよね~。」と共感を持って相槌が打てます。そして、たまには親ばかになって、我が子の取るに足らない取り柄を自慢をすることもできるのです。

私達は専門家ではありませんし、この集いで問題の解決ができるとは思っていません。一人一人やり方もゴールも違っていいのです。「子育てに正解はない」と確信するだけでも、肩の荷が少し下ろせます。 煮詰まってしまってる時には、異なるタイプの子を育てている方の経験や視点が、新鮮で思わぬヒントになることもあります。 発達障碍の場合、定型発達の子ども達のように「○歳でどんなことが出来るようになる。」というモデルがありませんから、我が子の将来を想像することも困難です。でも先輩たちの話からぼんやりとした将来像が見えることもあります。将来像が見えればもう少し頑張ろうと思えることもありますし、将来に備えて何かを始めようと決心することも出来ます。

JSSからの数々の援助

私達にとって貴重なこの集いに安心して出席するためには、チャイルドケアーは必須です。アムロの子供たちは、慣れない環境に馴染むのに時間がかかったり、扱いに少しコツが要るのですが、専門家ボランティアからアドバイスをいただいたり、新人ボランティアへのオリエンテーションや隔月のミーティングなどで、よりクオリティーの高いチャイルドケアーを目指して、ほぼ1対1でケアーしていただいています。ボランティアはJSSを通して紹介していただいて大変助かっています。 実際、ボランティアの多くをワーホリに頼っている現状ですので、これからも随時ボランティア募集をさせていただくつもりです。
それから、私たちが集いの会場を借りるために必要な保険もJSSのお世話になっています。おかげで私たちは安心して集うことが出来ています。JSSにはカウンセリングにおいても支援していただいています。大きなストレスの中で親も子もカウンセリングが必要になることがあります。発達障碍は男の子の割合が高いので、公家さんのような男性のカウンセラーは貴重です。その上、発達障碍児を扱いなれていらっしゃるので本当に安心してお願いできます。

感謝、感謝!

こうやって、曲がりなりにも会を立ち上げてみたら、色々な形で援助を申し出てくださる方々がいらして、想定外の喜びです。「持てる力を、必要としている人に届ける」中継点、という存在意義もあるのかと気づきました。

今までの「アムロを育てる会」へのご支援を感謝するとともに、これからもご支援くださいますようお願いい申し上げます。アムロを育てる会へのお問い合わせは amuronokai@jss.ca へどうぞ。